「動かす仕組み」のそばにいたい

ー 経営コンサルタントとしての私の原点 ー

中小企業にとって、経営者の交代やM&Aといった大きな節目は、まさに組織の命運を左右するターニングポイントです。誰が社長になるかではなく、「その後、組織が動くかどうか」が問題の本質です。私はそんな局面に立ち会う企業の伴走者として、経営の構造整理や戦略の再設計、組織再構築といった実装支援を行っています。
「事業承継後・M&A後に、会社が“動く仕組み”を再設計する実装型パートナー」
・・・それが、今の私の立ち位置です。
しかし、そこにたどり着くまでには、数えきれないほどの失敗と、忘れられない出会いと、数々の痛みがありました。今回は、私がこの仕事を志すに至った原点のストーリーを綴ります。

社会人1年目に出会った「経営の重さ」

水産高校を卒業して、私はニジマスの養魚場に住み込みで就職しました。社会人としての第一歩を踏み出した矢先、信じられない事件が起きました。入社した会社の社長が自ら命を絶ったのです。
その社長は創業者の息子で、2代目として会社を継いだ方でした。周囲からは「専務の方が商才がある」などとささやかれていたそうです。経営という責任と周囲の期待の狭間で、孤独とプレッシャーに押し潰されていたのかもしれません。ある夏の日、社長は箱根峠で排気ガスを引き込み、自ら命を絶ちました。若い奥さまと幼い娘を残して。
私にとって社会人としての最初の現場で、経営の責任がどれほど重いものなのかを突きつけられる出来事でした。

父の死と「働くこと」の本質

その同じ年、私の家庭にも大きな転機が訪れました。現場で建築板金の職人として働いていた父が、作業中に脳溢血で倒れ、そのまま植物状態に。45歳という若さでした。結局、2年後に亡くなりました。
私は、幼い頃から父の仕事を手伝いながら、「働く姿勢」というものを体で学んできました。父は、将来を見据えて花屋を開業しようと市場の視察を始めたばかりでした。あまりに突然の出来事で、その夢は叶うことなく終わりました。
父の死は、「働くこととは何か」を私に深く問いかけてきました。ただ家計を支えるだけではない。人生そのものに直結するテーマであることを、私は身をもって知ったのです。

金融業で学んだ「経営者の孤独」

20代前半、私は金融業界に入り、営業職として多くの中小企業と接するようになります。初めて契約を取ったのは、町の小さな電気店の店主でした。中学生の娘さんがいる家庭で、店舗の奥の座敷で契約書を書いたのを今でも覚えています。
店主は「特別困ってるわけじゃないけど、君が真剣だから付き合ってあげる」と言ってくれました。この言葉が、私の営業人生の原点でした。
しかし、数年後、その店主は借入の返済に行き詰まり、保証人と一緒に国道のトンネルで対向車線に突っ込むという形で命を絶ちました。状況から自殺と見られるとのことでした。
中小企業の経営者が、ノンバンクから借り入れをする理由は浪費や遊びではありません。目の前の資金繰り、従業員の給料支払い、明日の営業を守るため——。そのような現実を、私は金融の現場で直視しました。

不正・放漫経営と向き合ってきた経験

通信インフラ系の急成長企業に転職した私は、若くして管理職に就きました。ですが、そこではパワハラ、業績至上主義、不正といった倫理を欠いた現場に直面しました。
また、別の事務機器販売会社では、在庫管理の不正を指摘した結果、逆に経営陣から嫌がらせを受けることに。最終的に、社内で数千万円にのぼる横領事件が発覚します。
「正しいことを言えば報われる」と信じていた私は、そのたびに厳しい現実に直面し、自分の立ち位置を何度も見失いそうになりました。ですが、同時に確信したこともあります。それは「間違った経営のツケは、必ず社員やその家族に降りかかる」ということです。

「経営を構造から見直す」パートナーへ

40歳を境に入社したエネルギー関連商社でも、親族経営による私物化とパワハラが横行し、社員の自殺まで起こっていました。
この現場でも、私は再生可能エネルギー関連のプロジェクトに取り組みながら、行政とやり取りをする中で「コンサルタントを通せ」と言われた経験がきっかけで、経営コンサルタントという職業を強く意識するようになりました。
私は自費で中小企業診断士の勉強を始め、2年かけて一次試験を突破。その後、信用金庫の支店長の紹介で会計事務所に勤務しましたが、そこではコンサルティングに時間が割けず、やがて私は独立の道を選びました。

現在の私の立ち位置

現在、私は中小企業における事業承継後やM&A後の経営再構築に特化したコンサルタントとして活動しています。その中心には「構造を整え、組織が動くようにする」という一貫した軸があります。
私の強みは、机上の理論ではなく、実際の現場で得た経験を基盤にした支援です。企業の理念やビジョンを言語化し、それを現場に落とし込みながら実行可能な戦略として定着させていく。その過程では、経営者が抱える「どこから手をつければいいか分からない」という混乱を整理し、まるで交通整理をするように、優先順位を明確にしながら全体を動かしていきます。
戦略だけでなく、組織や業務プロセスの最適化にも深く関与します。企業の経営地図を描きながら、プロジェクト単位での推進まで行う、いわば戦略参謀としての伴走スタイルです。
一方で、私には「やらないこと」も明確に定めています。補助金の申請代行のような“手続き主導”の支援や、株式・仮想通貨といった投機的な金融商品へのアドバイスは行いません。また、税務・法務・労務といった士業専任の領域も、専門家と連携して対応し、私自身はその枠には入りません。さらに、ITシステムの開発業務や現場レベルのマイクロマネジメントも、私の支援の本質からは外れています。
私の支援は、単発の「相談ごと」に答えるものではなく、根本的な整理や構造改革を前提とした“ともに汗をかく”プロセスです。経営者の右腕として、変革の実装を最後までやりきることを重視しています。
特にご支援したいのは、以下のような企業です。
たとえば、事業承継を終えたばかりの企業で「社長は変わったが、組織が動かない」と悩んでいるケース。あるいは、第二創業や業態転換の途中で、「現場とビジョンがかみ合わない」と感じている経営者。また、M&A後に旧体制との整理が進まず、次の一手が打てずにいる組織。そうした、従業員数10〜150名規模の中小企業に、私は特に力を注いでいます。

最後に

私は、正直者が報われる社会を信じています。やればやっただけ評価され、社員がその会社で働くことを誇りに思える環境。そんな企業が増えることが、ひいては地域と社会全体の持続可能な発展につながると信じています。
これまでの失敗と学びをすべて糧にして、私は経営者の皆さんの隣で「動かすための構造」を整える仕事に取り組んでいます。過去を経て、ようやく見つけた私の天職。それが、今の私の立ち位置です。