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はじめに|「考える時間」は経営の “生産設備” である
中小企業の経営者にとって、最大の資源は“時間”です。そして、その中でも「考える時間」こそが、経営を先へ進める推進力となります。目の前の業務に追われる日々の中で、じっくり構想を練り、課題を掘り下げ、未来を描く時間は確保できているでしょうか?
多くの経営者が「忙しくて考える暇がない」と感じています。しかし、実際には“考える時間”は確保するものではなく、「創り出すもの」です。本記事では、経営者が考える時間を生み出すための具体的な実践法を紹介します。
1. なぜ経営者には「考える時間」が必要なのか?
考える時間は単なる“空き時間”ではありません。それは、企業の方向性・事業戦略・組織課題・財務計画など、あらゆる意思決定の質を高めるための、経営の中核時間です。経営の世界では「即断即決」が求められる場面も多いですが、本質的な意思決定には“考える”という静的な行為が不可欠です。
たとえば、新たな設備投資の判断、社員の採用や昇進、取引先との提携交渉など、経営者の一つ一つの判断が会社の未来を大きく左右します。このときに「何となく」「感覚的に」ではなく、情報や仮説、過去の経験を踏まえて思考された判断ができるかどうか。それこそが事業を前進させる原動力なのです。
また、「考える時間」は未来を創る時間でもあります。現場の混乱や日々の問題対応に埋没するのではなく、「この先、どのような世界をつくりたいのか」「そのためにどんな戦略を描くのか」を考える時間がなければ、企業は目の前の売上や課題処理だけの“停滞”に陥ってしまいます。

2. 「考える時間」をつくるには“余白”の設計が必要
時間は自然には空きません。考える時間を持てない人の多くは、すき間ができたら「そのときに考えよう」と思いがちです。しかし、空白は放っておけば「雑務」や「割り込み業務」に埋め尽くされてしまいます。
したがって、“意識的にスケジュールの中に考える時間を入れる”という「予定化」が必要です。予定化とは、他の業務と同じように「考える」という行為をタスクとしてスケジュールに入れることを意味します。
たとえば、
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毎週月曜の午前中は“戦略タイム”として会議を入れない
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金曜の午後は翌週の設計・仮説検討・構想メモ作成にあてる
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月に1回、外部の異業種経営者との意見交換ランチを入れる といったように、戦略的な「余白」をスケジュールの中に組み込むことが大切です。
また、「自分がいなければ回らない業務」をいかに減らすかも、時間創出の鍵になります。手離れの悪い業務はリストアップし、順次委任・自動化・廃止を検討する必要があります。第2回、第3回で触れた「棚卸し」「委任」の成果がここで活きてくるのです。
3. 「考える時間」を最大化する3つの環境づくり
考える時間の“質”を高めるためには、集中できる環境を整えることも不可欠です。
1 場所を変える
いつもと同じ場所では、思考も固定されやすくなります。非日常の空間に身を置くことで、脳の発想回路も切り替わります。カフェや図書館、自然のある場所、コワーキングスペースなど、あえて“外へ出て考える”ことが有効です。
たとえば、週に1回は「社外で考える日」と決めることで、アイデアの質や気づきの量が大きく変わる経営者も少なくありません。
2 道具を変える
思考のプロセスにおいては、デジタルとアナログのバランスが重要です。整理や蓄積にはデジタルツール(Notion、Evernote、Google Keepなど)を活用しつつ、構想や直感的な発想には手書きやホワイトボードが向いています。
特に初期の思考段階では、「紙とペン」「A3用紙に図を描く」「付箋を使って構造化する」といった、五感を刺激するアナログ手法が効果的です。
3 人を活用する
ひとりで考える限界もあります。とくに自社に対しては、視点が固定化されがちです。そこで重要なのが「壁打ち」できる相手の存在です。信頼できる右腕、同業・異業種の経営者、コンサルタントなどとの定期的な対話は、思考の質を深めてくれます。
考える時間の中に「会話」を取り入れることは、整理・深掘り・気づきの3つを同時に得られる貴重な機会です。
4. 「考えるテーマ」を明確に持つ習慣
ただ“空いた時間”に考えるだけでは、思考は拡散しがちです。時間を取るだけでなく、「何を考えるか」を意識的に設定することが、質を高めるうえで重要です。
【テーマの例】
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次の6ヶ月で集中すべき事業領域はどこか?
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今の売上構造は持続可能か?主要顧客の変化は?
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自社の強みを5年後も維持するには何が必要か?
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採用・定着の障壁になっているボトルネックはどこか?
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自分の価値判断基準はこの1年でどう変化したか?
こうした問いを定期的に自分に投げかけ、1つずつ考えて書き出すことで、経営者としての“思考の深度”が格段に上がります。
5. 「考える時間」は組織にも波及する
経営者が「考えること」を大切にする会社では、社員にもその姿勢が自然と伝わります。会議に余白があり、数字だけでなく“考察”が共有され、トップの思考プロセスが言語化されることで、社員は“考える組織人”に育ちます。
社員の週報に「気づき」や「提案」を書く欄をつくる、会議冒頭で「今日の問いかけ」を共有する、などの仕組みをつくることで、会社全体に「考える文化」が根づきます。
特に経営者が「問いを持っている姿」「考え続けている姿」を見せることは、組織のエンゲージメントやイノベーションの源になります。
まとめ|“考える時間” が未来をつくる
考える時間を持つことは、単なる“贅沢”ではなく、企業の未来を築くための“生産活動”です。シリーズ全6回を通してお伝えしてきたのは、「時間は奪われるものではなく、創り出すもの」という視点です。
経営者が“考える時間”を確保し、習慣化することで、業務・組織・戦略すべての質が変わります。そしてその時間が、最終的には「自社らしい経営」「望む未来」を実現するための、最も大切な経営資源となるのです。
まずは週に1回、30分からで構いません。“考える時間”を予定として組み込み、問いを立て、自分と対話する。そこから、未来は着実に動き始めます。
“考える時間”は、あなたの経営にどれだけありますか?」
「日々の業務に追われて“本当に考えるべきこと”に向き合えていないと感じたら、一度仕組みを見直してみませんか?経営の“思考時間”を設計する伴走支援を行っています。ご相談はこちらから。