「身体は“通す”もの」元S1競輪アスリートが見出した、可能性を引き出す技術とその理由 ─ 焼津発・ボディケアiyashiro 加藤浩利さんに訊く、“響く身体”とこれからの経営感覚

はじめに

「軸が通ると、音が変わる」「身体が整えば、行動が変わる」

そんな言葉が、単なる比喩ではなく、“事実”として語られる瞬間がある。

 

今回お話を伺ったのは、元S1競輪選手であり、現在は焼津市でボディケアサロン「iyashiro(イヤシロ)」を主宰する加藤浩利さん。

トップアスリートとして過酷な世界に身を置きながら、全身35カ所以上の骨折と向き合い、リハビリを経て第二のキャリアへ。

いま彼は、アスリートや音楽家、表現者たちの“身体の軸”を整える施術家として活躍している。

 

彼のキーワードは「通す身体」。

力で押し切るのではなく、神経の流れを整え、“本来のパフォーマンス”を引き出す技術──アクシスメソッド。

それは身体の話でありながら、人や組織の本質にも重なる、深いメッセージをはらんでいた。

 

現役時代の“極限の現場”で何を見て、施術家としていま何を伝えようとしているのか。

 

静岡・焼津という小さな町から発信される、加藤浩利さんの挑戦を追った。

第1章 トップアスリートの身体観─極限から生まれた気づき

「26年間、競輪選手として走ってきました」

 

そう静かに語り始めた加藤浩利さんの表情には、どこか穏やかな自信がにじんでいた。

その“走る”という言葉の裏側に、いくつの傷と再起が刻まれているのか、話を聞いていくうちに徐々に見えてきた。

 

高校卒業後すぐに日本競輪学校へ進み、20歳でプロデビュー。

以来、46歳で引退するまでの26年間、競輪界の頂点「S1」クラスで走り続けた。

言葉にすればたった一行だが、その裏には想像を絶する日々がある。

 

「現役時代は、身体がすべてでした。機材や戦術ももちろん大事ですが、最終的に勝敗を分けるのは“どれだけ出力を引き出せるか”。それは筋力や技術だけではなく、神経や意識の差でもあるんです」

 

加藤さんが語る“出力”とは、単なる筋肉の話ではない。

彼自身、そのことを身をもって体験してきた。

 

「競輪って、身体のどこかを壊しながら走っているようなところがあるんです。僕も通算で、全身35カ所以上の骨折を経験しました」

 

肩、肋骨、鎖骨、膝……挙げればきりがない。

それでも、リハビリを経て、何度もレースに戻り続けた。

 

「トレーニングで積み上げたものが、事故で一気にリセットされる。それが何度もあると、“元に戻す”というより、“もう一度ゼロから組み直す”という感覚になるんですよね」

 

たとえば、鎖骨を骨折したら、それ以外の部位を鍛えようとする。

だが焦って別のトレーニングを行えば、かえって回復が遅れることもある。

そうした身体と心の“ずれ”と常に対話しながら、自分の身体を「再調整」してきた日々が、加藤さんに特有の感覚を育てていった。

 

「身体って、部品じゃないんです。繋がり合ってる。だから、どこかひとつが詰まると、全部の流れが悪くなる。それは、組織にも、人の生き方にも言えるかもしれませんね」

 

アスリートとしての経験を経て、加藤さんが今たどり着いているのは、「出力」よりも「流れ」。

一番必要なのは、「通る身体」だったということに、後から気づいたのだという。

 

この「身体の感覚」に耳を澄ませながら、自らのキャリアを見直したとき、加藤さんの中に芽生えたのは、“自分の身体の経験を活かして、他の人の可能性を引き出したい”という思いだった。

 

「ケガとリハビリで、何度も“自分の身体を再設計する”ことになった。

 それなら、今度はそのノウハウを、他の誰かの“再設計”に使ってみたくなったんです」

 

 

この一言が、その後のキャリアのすべてを決定づけた。

 

第2章 アクシスメソッドとの出会いと衝撃

「最初は正直、“やらせ動画”だと思いました」

 

そう苦笑しながら語る加藤さんの口ぶりには、当時の“半信半疑”ぶりがよく表れていた。

 

引退後、身体の知識と経験を活かして施術家として歩み始めていたある日、知人からある動画を紹介された。

それは中学生の女の子が、見た目には信じられないような力を発揮する映像だった。

 

「トレーナーさんと正面から力比べをしているんですが、当然、最初は子どもが押されて負けるんですね。でも、何やら“ちょんちょん”と頭に触れただけの施術を受けた後、同じように組んだ瞬間……今度は逆に、大人のトレーナーが吹き飛ばされるんです」

 

にわかには信じがたい内容だった。

「演出でしょ?」「タイミングの問題じゃないの?」

自分の施術に自信があった加藤さんだからこそ、そう思った。

 

だが動画の中のトレーナーは、知り合いだった。

「これはさすがに、直接確かめるしかない」と思い、本人に電話をかけた。

 

「いや、本当なんだよ」

 

そう聞かされた加藤さんは、いても立ってもいられず、アクシスメソッドの体験会に参加することを決めた。

 

 

 

自らの身体で体験した、“異常なまでの変化”

 

 

施術体験は、加藤さんの身体の常識を根底から覆した。

 

まずは、立位でのバランステスト。

両足で立った状態で横から押されると、体幹の強さが試される。

 

「僕は現役時代に鍛えていたので、それなりに自信がありました。でも、やってみたら意外とグラついたんです。腹筋も意外と耐えきれなかった」

 

次に、アクシスメソッドの施術を受ける――ほんの数秒、頭部に軽く触れるだけのアプローチ。

 

「正直、“え、もう終わり?”っていうくらいの時間でした。でもその直後に同じテストをやってみたら、まったく揺れない。力の入り方が変わったというより、“身体の中に軸が通った”感覚でした」

 

驚いたのは加藤さんだけではなかった。

体験会で同席していた他の参加者も、同様のリアクションを見せていたという。

 

 

「多くの人が、驚きすぎて笑い出すか、逆に言葉を失うんですよ。僕自身は黙る方でした」

 

 

「努力」以外の成長の選択肢があるとしたら

 

 

加藤さんはこう続けた。

 

「僕らは、速くなりたい、強くなりたいと思ったとき、努力しか手段がないと思ってきたんです。反復練習、筋トレ、理論……全部“積み上げる”ことばかり。だけどこのメソッドは、今この瞬間に“通る”ことでパフォーマンスが変わる。そんなバカな、と思いましたよ。でも、変わってしまったんです。自分の身体で」

 

その瞬間、加藤さんの中でスイッチが入った。

 

“もしこれが本物なら、クライアントに提供したい”

“この方法で、不調を抱える人や、限界に挑むアスリートの力になれるかもしれない”

“もしかしたら、僕のように身体の限界を越えてきた人間だからこそ、説得力を持てるかもしれない”

 

アクシスメソッドをただの“テクニック”ではなく、“身体と意識を通す手段”としてとらえたとき、加藤さんは、競輪選手だった頃とはまた違う形で、人の可能性を“押す”のではなく、“通す”存在になろうと決意する。

 

 

それは、トップアスリートから施術家への、もう一つの“デビュー戦”だった。

 

第3章 “通す”ことで変わるパフォーマンス─経営者にも必要な身体感覚

加藤浩利さんの語る「アクシスメソッド」は、受けたその瞬間に“変わってしまう”という点で、従来の身体アプローチとは根本的に異なる。

 

筋肉を鍛えるのでも、骨格を矯正するのでもない。

わずか数秒、頭部に軽く触れることで「神経の流れ」を整え、身体本来のパフォーマンスを“解放”する。

 

「施術後は、“身体が軽い”とか“軸が通った感じ”という声を多くいただきます。でもそれ以上に大きいのは、皆さん“自分で驚いている”ということなんです」

 

その驚きの本質とは何か。

それは、「努力していないのに、できてしまった」体験にほかならない。

 

「本来持っていた力が出ていなかっただけ。塞がっていた神経が通ったことで、能力が引き出される。だから施術は“強くする”というより、“解放する”作業に近いですね」

 

 

これを聞いたとき、筆者である私はふと、経営者のあるべき姿に重ねた。

 

 

経営もまた「流れ」の上にある

 

 

経営者として日々多くの現場を見てきた中で、しばしば感じることがある。

─なぜこの会社は停滞しているのか?

─なぜあのチームは動きが重いのか?

 

数値や組織構造だけで説明しきれない“詰まり”がある。

会議では動かない、プロジェクトが続かない、挑戦を恐れて同じ場所にとどまり続ける。

その原因を突き詰めていくと、たいていの場合、組織に「通っていない」何かがある。

 

戦略が現場に通っていない。

理念が社員に通っていない。

意思決定が未来につながっていない。

 

「通っていないもの」は、蓄積しても発揮されない。

 

 

加藤さんの話を聞いているうちに、それがまさに“身体の中で起こっていること”とパラレルであることに気づかされる。

 

 

力ではなく「通り」で変わる

 

 

アクシスメソッドを受けた人の多くは、こう語る。

 

「力が入っている感覚がないのに、なぜか支えられている」

「踏ん張らなくても、軸がある」

「声が遠くまで響くようになった」

 

つまり、力を入れるのではなく、通ることによって“伝わる”状態になっているのだ。

 

これもまた、経営における理想的なリーダーシップと重なる。

指示を“押しつける”のではなく、“通して伝える”。

理念を“注ぎ込む”のではなく、“通る仕組みを整える”。

 

加藤さんはこう語る。

 

 

「僕は“無理をさせる”ことが目的ではないんです。むしろ、“無理をしなくてよくなる”ことが重要。軸が通ると、人は自然に動けるようになるんですよね」

 

 

経営者にも必要な「身体の通り」

 

 

加藤さんの施術には、実際に多くの経営者も通っている。

理由はさまざまだが、共通しているのは「疲れやすい」「集中力が続かない」「姿勢が崩れる」といった、自覚的なパフォーマンスの低下だ。

 

「経営者の方って、自分の身体が“資本”であることをどこかで分かってるんですよね。けれど、時間や判断に追われるうちに、感覚がどんどん鈍くなる。だから僕は、施術を通じて“自分の中心”を思い出してもらいたいんです」

 

実際、施術後に「商談で声の通りが違った」「集中力が戻った」「1日が軽やかだった」という声も多い。

 

それは何かを「新たに得た」感覚ではなく、

 

「本来の自分に戻った」感覚に近いのかもしれない。

 

「力むより、通す」

これは身体に限らず、経営にも、人生にも通じる真理だ。

 

 

そして、加藤さんは言葉ではなく、身体を通じてそれを伝えるプロフェッショナルなのだと、私は確信した。

 

第4章 施術から学ぶ“実感主義”─信じられるのは結果だけ

加藤浩利さんが提供するアクシスメソッドの特徴は、何より「即効性」にある。

わずか10秒の施術で、身体の“通り”が変わる。

理屈よりも、まず身体が先に驚く。

 

「信じない人ほど、びっくりしますね。やってみて、もう笑うか、黙るかのどっちかですから」

 

そう笑う加藤さんは、決して“オカルト”に寄るわけではない。

施術の前後で必ず行うビフォーアフター検証は、科学的というよりも、極めてフェアだ。

 

  • 押された時の身体のぐらつき

  • 片足立ちの安定感

  • 腕の可動域や筋力反応

  • 呼吸や声の伸び方

 

これらは数字ではないが、誰にでも“わかってしまう”変化だ。

 

 

実感がすべてを凌駕する

 

 

施術を受けたクライアントの多くは、「え、なんで?」「どうしてこんなに変わるの?」と、思考が追いつかずに驚く。

 

だがそれは、ある意味で理にかなっている。

身体の変化は“体感”という無条件のデータであり、それを超える説明はない。

 

「結果がすべてですからね。どれだけ専門用語を使っても、実際に変化が起きなければ意味がない。逆に、説明が下手でも、“変わる”という事実がすべてを語ってくれる」

 

このスタンスには、筆者も経営の現場で多く感じてきた「説得と納得」の違いが重なる。

“伝える”のではなく、“起こす”

 

変化を目の前で感じた瞬間、人は信じる。

 

 

アスリートの中には「秘密にしたい」人も

 

 

アクシスメソッドは、さまざまな競技のトップアスリートにも提供されている。

ただし、彼らの多くは「このことは秘密にしてほしい」と口を揃える。

 

「ライバルに知られたくない、っていうのが本音みたいですね(笑)」

 

中には、全国大会・世界大会の直前にだけ施術に訪れ、以後は表には出さないまま結果を出す選手も少なくないという。

 

─なぜここまで、施術が効くのか。

 

加藤さんははっきりと断言する。

 

「神経が通るだけで、身体ってこんなに変わるんだっていうのを、僕自身が体験したから。もともとある力が“引き出される”。その分、無理がないんです」

 

無理をしていないのに、結果が出る。

だからこそ、多くの人が“続けたくなる”。

“他人に話したくないほどの武器”になってしまう。

 

 

これは、サービスとしての完成度の高さでもあり、“変化を売る”という意味で、実にマーケット性の高い技術だと感じた。

 

 

「言葉より先に、身体が納得する」世界

 

 

施術の際、加藤さんはあえて多くを説明しないという。

なぜなら「頭で理解しようとするより先に、身体で“知ってしまう”」からだ。

 

その実感の強さは、ある意味で説明を超える。

この実感に勝る“納得”は、存在しない。

 

マーケティングの世界でも、「体験を設計する」ことの重要性は言われ続けているが、加藤さんの手法は、最短距離でそれを達成している。

 

  • シンプルであること

  • 再現性があること

  • 効果が一瞬で出ること

  • 主観ではなく、身体が証明すること

─これは施術家である前に、一人の起業家として見たときの加藤浩利という人物の「信頼構築スタイル」そのものだ。

 

「結果がすべて」──このスタンスは、ビジネスにも、現場にも、教育にも共通する。

 

 

加藤浩利という人物の説得力は、施術の上手さではなく、“変化を信じる”覚悟の強さにある。

 

第5章 音楽家や表現者との接点に見る、“響く構造”の重要性

「身体は“鳴らす”ものではなく、“響かせる”ものだと思っています」

 

加藤浩利さんがそんな言葉を語るようになったのは、音楽家や舞台表現者たちからのフィードバックがあまりに鮮烈だったからだという。

 

アスリートに施術をする中で得た手応えとはまた違う、“音”という形で返ってくる変化

それは、身体の変化が他者にも伝わる、まさに“響きの構造”を証明する出来事だった。

 

 

 

「声が後ろから聞こえた」

 

 

加藤さんが出会ったある女性クライアントは、コーラスを長年続けている歌い手だった。

その方は施術の後、開口一番、こう語った。

 

「自分の声が、後ろから聞こえたんです」

 

一見すると意味が分からない言葉だが、加藤さんにはすぐに理解できた。

つまり、それまでは正面へだけ“通って”いた音が、身体を媒介して全方向に広がるようになったということだった。

 

「声って、顔の向きとか姿勢で結構変わるんですよね。でも彼女の場合、特別な発声練習をしたわけではない。ただ“通った”だけなんです」

 

つまり、身体が“閉じていた”ところから、“開いた”のだ

それにより、声が空間に響くようになった。

これは、プロの声楽家だけでなく、ビジネスシーンにおける「通る声」「伝わる話し方」にも直結する。

 

 

 

三味線奏者の「同じ音が出た」奇跡

 

 

もうひとつ、印象的だったのは三味線を学ぶクライアントの事例だ。

 

「その方は、何年も三味線を習っていたんですが、“先生と同じ音が出ない”とずっと悩んでいたそうなんです。でも施術後、お稽古で初めて“同じ音が出た”と」

 

もちろん、運指や撥(ばち)の使い方は同じである。

だが、出る音が違う。

それが、施術を受けた後は楽器との“共鳴感”が増したことで、はじめて理想の音色に届いたという。

 

加藤さんはこう語る。

 

「身体って、ある意味“共鳴箱”なんです。楽器と一緒に“響く構造”が整っていないと、音も行動も、届かない」

 

まさに“身体が楽器”であることの証明である。

 

 

 

パフォーマンスとは、情報の伝達力である

 

 

身体の変化が音に表れる。

つまり、内的変化が外部に伝播する“媒体”としての身体という見方ができる。

 

これは舞台役者、ダンサー、プレゼンター、さらには経営者にとっても本質的な示唆だ。

声が響く、動きが通る、空間を掌握できる──これらは、単に「スキル」ではなく、「構造」から生まれる現象だ。

 

そして加藤さんの施術は、この「構造」に介入する。

 

「僕が見ているのは、“動き”よりも“通り”です。どこかで詰まっていると、声も、動きも、響かないんです。逆に、通れば、出力しようとしなくても、伝わるようになる」

 

これはまさに、“無理なく届く”状態をつくるということ。

力で押すのではなく、力が抜けても伝わる構造をつくる。

それは技術というより、“身体の設計図を書き直す”ようなアプローチだ。

 

 

 

なぜ音楽家が、アクシスメソッドに惹かれるのか

 

 

筆者自身、ホルン奏者として演奏経験があるからこそ、これは非常によく分かる。

音楽は“出す”のではなく“通す”ものであり、音は技術ではなく**身体と空間の「状態」**に左右される。

 

息の流れが整えば、音は自然と響く。

身体の軸が整えば、コントロールや持続も安定する。

それを知っている演奏家ほど、身体という“楽器”の状態に敏感だ。

 

 

加藤さんは、まさにその“調律師”のような存在だ。

 

第6章 経営と身体のアナロジー ─“軸が通る組織”はどう生まれるか

「組織に“軸”が通っていない」

 

経営者の方々と向き合う中で、私が最も多く耳にする言葉の一つだ。

理念はある、戦略もある。なのに、現場が動かない。組織全体に推進力が生まれない。

そんなとき、“通っていない”という感覚が、経営者の身体や言葉ににじむことがある。

 

この感覚は、加藤浩利さんが語る「身体の軸が通るとパフォーマンスが変わる」という話と、まったく同じ構造を持っている。

 

 

 

「通る」とは、流れること

 

 

加藤さんは言う。

 

「どれだけ強い筋肉があっても、神経の流れが悪ければ力は伝わらない。大事なのは“流れているかどうか”なんです」

 

これは組織における“意思決定”や“ビジョンの浸透”にも通じる。

トップの意志が下に降りてこない、現場の声が上に上がってこない──これは、組織に神経が通っていない状態といえる。

 

つまり、経営も身体も、「構造が整っているかどうか」で、全体の伝達効率が決まるという点で共通している。

 

 

 

「通す」ことで機能する──施術の視点から経営を見る

 

 

加藤さんの施術では、対象者の身体を強化するのではなく、「本来持っている力を引き出す」ことに主眼が置かれる。

一切の強制や矯正ではなく、“通す”ことで自然と機能が目覚めるのだ。

 

この考え方は、組織運営にも大きなヒントを与えてくれる。

 

  • 無理に統制しようとするより、「構造」を整えて自然に機能させる

  • スキルを積み上げる前に、「通す設計」を見直す

  • トップダウンでもボトムアップでもなく、「全体の流れ」を意識する

 

 

実際、企業において“現場が自走するようになる”というのは、身体で言えば「軸が通った状態」にほかならない。

 

「僕は、体のどこが詰まっているかを見るんです。たとえば右手に違和感があっても、原因は左脚だったりする。表面的に見えていることが“本当の問題”とは限らないんですよね」

 

この言葉は、まさに現場支援をしている私たちコンサルタントの実感とも一致する。

問題が表面化している部門ではなく、意外な部署の“詰まり”が全体に波及していることもある。

 

 

 

「軸が通る組織」とは何か

 

 

では、加藤さんの語る「軸が通る身体」に対して、経営でいう「軸が通る組織」とは、どのような状態だろうか。

 

私なりに言葉にするならば、それは以下のような組織だ。

 

  • ビジョンが迷いなく共有されている

  • 誰かが「動かさなくても」現場が自然に機能している

  • 上意下達ではなく、自然な“循環”が起きている

  • 社員一人ひとりが“自分の役割の中に確信”を持っている

 

 

つまり、無理に「動かす」必要のない、しなやかで、自然な推進力のある組織

これはまさに、加藤さんが言う「力まなくても動ける身体」と、見事に重なる。

 

 

 

経営者は「通す人」になる

 

 

加藤さんは施術家として、身体の“通っていない部分”を見極め、そっと介入する。

その姿はまるで、経営者の“通り道”を整えるコンサルタントのようにも見える。

 

実際、経営者の役割は「引っ張る」ことでも「押し込む」ことでもなく、“通す”ことにある。

理念が通る、判断が通る、人の意思が通る──

それによって組織は自然と活性化する。

 

経営者は、力む必要はない。

必要なのは、通る構造をつくり、そこに“信頼のエネルギー”を流すことだけだ。

 

 

加藤浩利さんの仕事は、そのことを“身体”を通して教えてくれている。

 

第7章 地域に根ざすビジョンと、身体性のリーダーシップ

加藤浩利さんがボディケアサロン「iyashiro」を構えているのは、静岡県焼津市。

東京でも大阪でもない。人口13万人の地方都市だ。

 

彼のような実績を持つ施術家であれば、大都市の中心地でビジネスを広げることもできただろう。

しかし、彼はあえて“焼津”という地に腰を据え、そこから静岡市にも活動を広げながら、自らの手で“通す”人々を増やしている。

 

なぜ、地方にこだわるのか──。

その問いへの答えに、加藤浩利という人物の“身体性のリーダーシップ”が滲んでいた。

 

 

 

小さなまちだからこそ、通じる仕事がある

 

 

最初は、たまたま住んでいたという理由で焼津にサロンを出したんです。だけど続けるうちに、“ここでやる意味”を感じるようになったんですよね」

 

加藤さんは、焼津という地域で数多くのクライアントに施術を行いながら、まちの声を聞き、暮らしを見つめてきた。

都市部に比べて情報もスピードもゆるやかかもしれないが、その分、人と人との“感覚の通り方”が違う。

 

「地域の方々って、すごく“実感ベース”で物事を捉えるんですよ。効いたか、変わったか、楽になったか。それがすべて」

 

この“実感主義”こそ、加藤さんの施術スタイルと相性がいい。

口コミが広がり、商店街のなかでも静かに認知が広がっていった。

 

 

 

身体から始まる、地域の健康づくり

 

 

加藤さんは、単にサロンで施術を提供するだけでなく、地域のイベントや商業活動にも協力している。

ときには商店街のキャンペーン、ときにはスポーツ系の地域イベントで施術を体験してもらい、体の変化を実感してもらう。

 

「健康って、特別なことじゃなくて、“日常がどう快適か”だと思うんです。だから、身体に意識を向けるきっかけを、まちのなかに散りばめたい」

 

この姿勢は、まさに「身体性を持ったまちづくり」といえる。

診療所や病院ではなく、もっと身近なところに、“身体と向き合う入口”を用意しているのだ。

 

しかも、そこには「通すこと」で人が元気になるという、希望に満ちたストーリーがある。

 

 

 

「伝わる経営」は、まちの中から始まる

 

 

地方での起業や施術活動は、ビジネス的に見ればマーケットが限られているようにも見える。

だが、加藤さんは違う視点でそれを捉えている。

 

「大きな都市じゃなくても、“伝わる仕事”はできます。むしろ、近すぎるからこそ、“誤魔化しが効かない”んですよね」

 

これは経営者として非常に示唆に富んだ視点だ。

人と人の距離が近く、口コミがリアルタイムで反映される地方都市では、“誠実な仕事”が何よりも信用される。

加藤さんのように、“結果で語るスタイル”が地元で支持されるのは、地域特性に合っているからに他ならない。

 

 

 

リーダーとは、先に「整っている人」

 

 

「僕は、別に“前に立ちたい”わけじゃないんです。だけど、“通っていない人”に触れると、自然と自分が整えに行く側になっている」

 

この言葉には、現代の“リーダー像”に対する大きなヒントがある。

 

リーダーとは、命令する人ではなく、「通っている人」。

周囲に何かを押しつけるのではなく、自らが整っていることで、他者の流れを自然に整える。

それは、姿勢でも、話し方でも、在り方でも、“存在そのものがメッセージ”になっていくということだ。

 

地域の中で、誰よりも早く整い、静かに伝える。

 

加藤浩利さんの仕事には、「小さくとも、確かに通っている経営」の姿がある。

 

第8章 経営者が“身体”を整えるべき理由

「頭が働かない」「集中力が続かない」「言いたいことがうまく伝わらない」

 

経営者である私たちは、ときにこうした“目に見えない不調”を抱えながら、現場や数字と向き合っている。

その背景にあるのは、決して“能力不足”ではない。

むしろ多くの場合、「身体が通っていない」ことによる、エネルギーの不完全燃焼だ。

 

このことを、加藤浩利さんの施術を通して痛感させられた。

 

 

 

経営者もまた「身体が資本」の職業である

 

 

「施術に来られる経営者の方って、ほとんどが“限界に気づけない”まま動いているんですよね」

 

加藤さんは、そう語る。

日々の判断、対人関係、未来への構想……経営者の頭脳と感情は常にフル稼働だ。

その一方で、自分の身体の状態に無頓着なまま、無理を続けてしまう。

 

「首が回らない」「腰が重い」「眠りが浅い」

これらは経営数字では計れないが、確実に“判断の質”を蝕んでいく

 

加藤さんのサロンには、そうした“自覚なき疲労”を抱えた経営者たちが、ぽつぽつと現れる。

そして、施術を受けた直後から、口を揃えて言うのだ。

 

「呼吸が深くなった」

「声がよく通るようになった」

「商談での伝え方が自然になった気がする」

 

これらはすべて、身体が“整った”ことによる効果にほかならない。

 

 

 

「伝わる身体」は、数字以上に人を動かす

 

 

経営者に求められる最大の能力とは、**“人を動かすこと”**だ。

しかし、“動かす”ためには、まず自分自身のエネルギーが滞っていてはならない。

 

  • 声が響かない

  • 表情が硬い

  • 話していても、相手がどこか納得していない

 

 

こうした場面では、内容よりも“身体そのものの状態”が、無意識のうちに相手に伝わっている。

 

加藤さんの言葉を借りるなら、「通っていない身体」からは、何も伝わらないのだ。

 

 

 

プレッシャーの抜き方は「力を入れること」ではない

 

 

ここで大切なのは、「休む」や「力を抜く」ではない。

加藤さんが行っているアプローチは、**“流す”**ことだ。

 

「力を抜くって、意外と難しいんですよね。でも、“通っている状態”になれば、そもそも無駄に力まなくてすむようになる」

 

これは、単なるリラックスとは違う。

自律神経や重心のズレ、意識の集中の仕方を「整えておくこと」で、自然と“最大限の自分”を発揮できる身体になる。

 

言い換えれば、“整っている状態”が、経営者にとっての最強の武器になるのだ。

 

 

 

「自分を整える人」が、信頼される

 

 

経営とは、「誰が言うか」がすべてを左右する世界だ。

同じ言葉でも、同じ戦略でも、“整っている人”が語ると、驚くほど伝わる。

 

  • 余計な力が入っていない

  • 言葉の奥に“身体的な納得感”がある

  • 存在自体に信頼が宿る

 

 

それは“話す技術”ではない。

自分を整えているかどうかが、説得力を決定づけている

 

加藤さんの施術は、そんな“伝わる身体”を支える基盤づくりであり、経営者にとって極めて実践的な自己整備である。

 

 

 

「経営が行き詰まっているとき、自分の身体もまた、どこか滞っている」

 

そんなふうに、自らのコンディションを省みるリーダーが増えれば、会社も社会ももっと“通りのいい場所”になっていくだろう。

 

加藤浩利さんの仕事は、ただのボディケアではない。

 

未来を整えるための、身体からのアプローチなのだ。

 

第9章 おわりに ─“通っている人”は、伝わり方が違う

「この人の話は、なぜか心に響く」

「説明は少ないのに、なぜか納得してしまう」

 

経営者やリーダーを見ていて、そんな“伝わる人”に出会うことがある。

不思議と周囲を動かし、チームに熱を与え、言葉以上の何かを届けていく存在。

その人たちに共通しているのは、“通っている”という感覚だ。

 

自分の中心に迷いがなく、言葉と行動と表情が一致している。

そんな“整った人”には、説明以上の“共鳴”が起こる。

 

加藤浩利さんの仕事は、まさにその「通る人」を増やす仕事だ。

彼は“整える”ことを目的とはしていない。

“整えば、自然と伝わる”ということを、自身のキャリアと身体で証明し続けている。

 

 

 

技術ではなく、“状態”をつくるということ

 

 

アクシスメソッドという施術は、一見すると非常にシンプルだ。

何かを強く押すわけでもなく、特殊な器具を使うわけでもない。

ほんのわずかな時間、頭部に触れるだけで、身体の中に“通り道”ができる。

 

「施術を受けたその瞬間から、自分が変わってしまう」

 

それは技術の力というより、“本来の自分”を取り戻すトリガーだ。

 

経営においても、人間関係においても、結局のところ最も大切なのは“あり方”であり、“状態”である。

力むより、整える。伝えようとするより、通す。

加藤さんの仕事は、その“新しいコミュニケーション”の形を示してくれる。

 

 

 

「整っている人」が社会を変えていく

 

 

加藤さんは、静岡県焼津市という地方都市に拠点を構えながら、静かに、着実に、“整っていく人”を増やしている。

スポーツ選手だけでなく、音楽家、障がいを持つ子ども、経営者、そして地域の高齢者に至るまで──。

 

彼の周囲では、身体が変わり、人が変わり、言葉が変わり、行動が変わる。

それは決して派手な変化ではないが、「確かに通っている」変化だ。

 

この連鎖の中にこそ、これからの時代に必要なリーダーシップのあり方がある。

「声を張る人」ではなく、「響く人」

「多くを語る人」ではなく、「整っている人」

 

それは、見えないものが見えてくる時代において、何よりも強く、信頼される存在になるはずだ。

 

 

 

加藤浩利さんという“経営者”

 

 

元S1競輪選手という経歴は、彼にとって“看板”ではない。

幾度もの骨折と復帰の中で、自らの身体と向き合い続けてきた、その“プロセスの蓄積”こそが、今の彼の価値をつくっている。

 

そして彼は、アクシスメソッドを通じて、「身体の整え方」を通しながら、実は“人生の整え方”を伝えている。

これは、経営にも、組織にも、家庭にも通じる普遍の知恵だ。

 

整っていないと、人は動かない。

通っていないと、伝わらない。

響かない言葉は、やがて届かなくなる。

 

だからこそ、まず“自分自身”を通すことが、何より大事なのだ。

 

 

加藤浩利さんの仕事は、静かにそう教えてくれる。


#加藤浩利 #アクシスメソッド #トップアスリートの知見 #身体は楽器  #通る身体 #伝わるリーダー #経営者の身体づくり #静岡発信 #焼津の起業家  #身体性のリーダーシップ #実感主義 #整える経営 #共鳴する組織 #ホルン奏者の視点  #経営コンサルタントの現場記録